小学生のピアノ学習者同士のライバル争いというのも、よく目にする光景ですね。 「誰々ちゃんは、今、バイエルの○○番をやっているみたいだよ、ということは私の方が○番先に進んでいるから 私の方が上手いんだよね」と得意げに話す女の子がいたとします。果たして、この女の子の言うことは 正しいのでしょうか?それとも正しくないのでしょうか? 結論から先に言えば、「全く分からない」です。一般には、先に進んでいる人の方が上手いと言えますが、 進みが遅い人の方が実は技術的にレベルが高い、という逆転現象もありうるからです。 だから、どちらが上手いかを判断するためには、実際に2人に弾いてもらって、比べる以外に方法がないわけです。
進度と上達度の逆転現象が生じる理由
それでは、何故、このような逆転現象が生じてしまうのでしょうか? それは、子供のピアノの練習に取り組む姿勢もさることながら、その指導者(先生)の厳しさの違いが大きな原因です。 甘い先生(すぐにマルをあげる)の生徒であれば、あまり良く弾けなくても、マルをもらえて、どんどん先に進めますが、 先に進めるだけで、あまり上達していない場合が往々にしてあります。 逆に、厳しい先生(なかなかマルをあげない)の生徒であれば、ある程度よく弾けても、納得できない点を細かく指摘し、 次週以降の課題として生徒に与えます。それが全てクリアできないと、さらに次週に持ち越し、となり、 なかなか先に進めないわけです。この場合、生徒は1曲1曲から学ぶものが多く、確実に上達していくと 思いますが、肝心の「やる気」、「モチベーション」が急降下する場合が少なくありません。 指導者が評価を厳しくすることと甘くすることと、それぞれ一長一短あるわけです。
指導者の立場で
評価を厳しくするか、甘くするか、どこにその線引きをするかを考えてみようと思います。 当然のことながら、生徒1人1人にはそれぞれ他の生徒と違った個性がありますね。 その個性をよく考えて、その個性に応じて、評価の基準を変えるのが正しいと個人的には考えています。 と言っても、これは決して不公平なやり方とは思いません。 よく練習してくる生徒の場合、多少要求のレベルを高くしても、それに応えるべくさらに努力してくれるため、 効率よく上達できるように、その1曲の中に色々な課題を見つけてこなすように指導すると思います。 このような生徒の場合、モチベーションの維持、向上に気を取られる必要がないので、指導しやすいと思います。 反面、あまり練習してこない生徒の場合、そもそも初めからやる気がないわけですから、 闇雲に要求レベルを高くして、1曲に何週間も付き合わせると、ピアノが完全に嫌になってしまいかねない、 という危険があります。従って、このような場合、多少、要求レベルを下げて、評価の基準を甘くして、 早く先に進ませてあげて、やる気を出させる、という、いわば邪道の指導が意外に正解だったりする、と考えています。 但し、この2人の生徒に関しては、よく練習してくる生徒の方が早く進むように若干バイアスを付けるのは 当然です。 というわけで、生徒1人1人の「やる気」をよく見て、それに応じて評価の基準を柔軟に変えていくことが大切だと思っています。
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